あなたは周囲の価値観によって形作られる
今週のお題「読書の秋」に参加させていただきます!
読んだ本はこちら、「愚行録」です。
なかなか衝撃的な内容だったので、他の方の感想を検索してチェックしたのですが、
感想の中で良く目にした言葉がイヤミスです。
意味は以下のとおりです。
読んで嫌な気分になる(=後味の悪い)ミステリーのこと。(はてなキーワードより引用)
お恥ずかしながら、この言葉はじめて知りました。
確かに内容はいや〜な気分になりましたね。
そして、ミステリー部分が最後に綺麗に伏線を回収し明かされるんですが、その真実が本当にいや〜な気分になる。笑
ただ、すごく面白かったです。
面白いというより、興味深いというべきか。。。
このお話、2つの視点が同時進行で描かれているんですが、
メインの視点は、一家殺人事件の被害者について取材するインタビュアーの視点です。
この視点では、被害者の人間性が周囲の人からの伝聞で描かれていきます。
この視点では、犯人は誰か、動機はなんなのかというところがミステリーになっています。
様々な人の視点で被害者の人間性が描かれることで、
人間ってなんてあやふやな存在なんだ!
と強く感じさせられました。
インタビューの中で出来上がっていく被害者は、なかなか利己的で嫌な奴なんです。笑
ただ、自分はどうだろう?って考えた時、周囲の人から作り上げられた私もさぞかし愚かなんじゃないかって思うんです。
人の印象ってどうやって形成していますか?
私はこの本を読んで、相手と自分とのズレ、価値観のズレになるんですかね?とにかくズレた部分を積み重ねて形成していると思いました。
自分は食べ方が汚いが相手は綺麗だ → しっかりしている
自分は時間を守るが相手は守らない → 時間にルーズだ
自分と同じ部分は印象に残らず、違う部分が印象に残る。
いい部分も悪い部分もです。
そして、年を取ればとるほど、いい部分も素直には認められなくなる。
この被害者の嫌な部分として描かれている利己的なところ。
嫌な奴だなと思いつつ、実は結構共感してしまうところでもあります。
年を取ればとるほど、善意は偽善になっていくって思いませんか?
例えば、仕事で困っている後輩がいるとします。
私は、真っ先に助けてあげます。
今度から困らないように、対応方法を教えます。
これは善意ではなく、自分のためです。
回り回って自分の仕事に悪影響が及ばないようにするためです。
今後、頼み事をしやすくするためでもあります。
被害者の利己的なエピソードは、なかなか強烈なものでしたが、
大なり小なり誰でも似たような部分を持ち合わせていると思うんです。
上のエピソードを伝聞でこう言われちゃったら、嫌なやつだな〜ってなりますもんね。
「いつも困った後輩を助けてあげていました。
でも、感謝の気持ちを利用して、いろいろ面倒なことを押し付けたりもしていて。。。
ちょっと酷いなって思いました。」
もう一つの視点は、謎の妹の視点で、兄に話しかけている言葉が書かれています。
この存在もミステリーの一つになっています。
物語のテーマは愚行、登場人物がそれぞれ愚かに描かれています。
でも、ひとつひとつのエピソードはそこまで特別に愚かな行動ではなく、
誰でも登場人物になり得る、そんな身近さを感じさせる小説でした。
映画も見ました。
自分が描いていたイメージとズレがあって、正直イマイチでした。
原作の妙が活かしきれていないというか、平凡な作品になってしまったように感じました。
キャスティングですが、今後もしまた映像化されることがあったとしたら、私的には田向(夫)は竹内涼真くんにやって欲しいですね!純朴な感じと利己的な部分どちらもハマりそう。思いっきりギャップをつけて演じていただきたい!
ちなみに映画には、今年世間を騒がせた小出恵介さんが出演しています。
そして、それが災いして上映打ち切りにもなってしまいましたが、
販売、レンタルはされているので、よかったらこちらもぜひ。
最後に。。。
原作読んだ方でもしこのブログを読んでくださった方がいらっしゃったらお聞きしたいんですが、田向(夫)の学生時代のエピソード(ストーカー撃退と二股など女性関係)と社会人のエピソード(クレーマーと肉食系女子)が対比で書かれていましたが、このエピソードでの印象のズレってどういう意図で書かれているのでしょうか?
女性関係は、学生時代の経験を活かし同僚を利用して対処した、ということなのか?と思うのですが、クレーマーの方は何故やられっぱなしになっていたのか思い当たるところもなく。。。
どうにも理解できず、モヤモヤしています。